認知症の親の不動産(マンションまたは戸建て)を売る時の注意点はあるの?
親が認知症になったことにより、不動産の売却ができずに悩んでいる人は少なくありません。親が意思決定できない状況にある場合は、成年後見制度を利用しないと、親名義の不動産を売ることができないためです。
しかし、成年後見制度が複雑で理解することは容易ではありません。実際、「すべての行為に裁判所の手続きが必要」などと誤解をしている人も数多くいます。
そこで、東京の小岩で40年以上不動産売買を行っている不動産売却のプロが、認知症の不動産を売る際の注意点について解説します。ぜひ、参考にしてください。
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《親が認知症の場合は不動産売却ができない》
認知症が原因で親の判断能力がなくなり、意思の確認が不可能になると、親名義の不動産は売却することができなくなります。
ただし、認知症でも意思能力を有していると認められた場合は、親名義の不動産でも売却できるため、まずは意思能力の有無を調べることが重要です。
《親の意思能力が無い場合は売却できない》
親が認知症によって意思をしめす能力が無いと判断された場合には、基本的に親名義の不動産を売却することはできません。意思をしめすことができない人が行った法律行為は、手続きを含めてすべて無効になると民法第3条の2により定められているためです。
出典:e-Gov民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
仮に、意思確認ができると嘘をついて不動産売却の手続きを行なっても、物件の引き渡す際に同席している司法書士が名義人の意思確認を実施するため、誤魔化すことも不可能です。
そのため、嘘をついて売却するような行為はしないようにしましょう。
《親の意思能力が有る場合は売却できる》
親が認知症になったとしても、親名義の不動産を売却できるケースもあります。認知症と一言に言っても、進行状況などは個人によって症状に違いがあり、売却するかどうかを判断できるケースもあるためです。
なお、意思能力の有無についての見極めは、司法書士や不動産会社の担当者が名義人に質問して、問題なくコミュニケーションが取れているかどうかで見極めるのが一般的です。
具体的には、家族の名前や生年月日などの「はいといいえ」で返答できない質問を行います。
ただし、裁判によって名義人の意思能力を見極める場合には、医師の診断書で能力を見極めるのが通例です。
《認知症であっても成年後見制度を活用することで売却できる》
親が認知症によって意思能力がないと判断された場合には、成年後見制度を利用することで不動産売却が可能です。
しかし、成年後見制度は複数の種類があるうえに、複雑なため、よく理解しておかないとご自身がどの制度に該当するかがわかりません。
ここでは、成年後見制度について詳しく解説していくので、確認するようにしましょう。
《成年後見制度とは》
成年後見制度とは、認知症だけでなく他の病気や事故によって判断能力が低下した人のための制度です。家庭裁判所が援助する人を選んで、財産の管理などを行います。
なお、この制度には以下の種類があり、状況によって利用する制度は異なります。
名称 |
内容 |
任意後見制度 |
自身で判断できるうちに財産管理してもらう後見人を選ぶ |
法定後見制度 |
自身が判断できなくなった状態で裁判所に後見人を選出してもらう |
出典:法務省(http://www.moj.go.jp/MINJI/a01.html#02)
また、法定後見制度は判断能力の程度によって後見人が以下の3つの類型に分けられます。
類型 |
補助 |
補佐 |
後見 |
判断能力 |
物忘れなど軽度の状態 |
著しく低下している状態 |
判断できない状態 |
代理権の範囲 |
家庭裁判所が定める特定の法律行為(本人の同意が必要) |
財産に関するすべの行為 |
|
成年後見人の同意が必要な行為 |
民法13条に1項に定められている行為の一部(本人の同意が必要) |
民法13条に1項に定められている行為(借金、相続の承認、放棄など) |
― |
取り消し可能な行為 |
同上 |
同上 |
日常生活に関する行為以外の行為 |
制度を活用した場合の資格制限 |
― |
医師や税理士等の資格や会社役員、公務員の地位を失う |
同左 |
出典:法務省(http://www.moj.go.jp/MINJI/a02.html#02)
類型によって使用できる権限が異なるため、違いを理解しておくようにしましょう。
《成年後見制度を利用した際の不動産売却の流れ》
成年後見制度を使って、不動産売却をする際の手順は以下の6つです。
1. 家庭裁判所に成年後見制度開始を申し立てる
2. 必要な場合は医者の鑑定を受ける
3. 後見人が選定されて審判が確定する
4. 不動産会社と売買契約を行い売却する
5. 家庭裁判所から許可を得る
6. 裁判所からの許可後所有権移転登記を行う
出典:裁判所(https://www.courts.go.jp/wakayama/l2/l3/l4/Vcms4_00000133.html)
上記のように、通常の売却方法と違い、家庭裁判所の手続きなどで時間と手間がかかります。
《成年後見制度を活用する際に必要な書類》
成年後見制度を活用する際に必要な書類は以下になります。
・ 申立書
・ 申立人の戸籍謄本(本人以外が申し立てる場合)
・ 本人の戸籍謄本、戸籍の附票、登記事項証明書、診断書
・ 申立事情説明書、親族関係図、親族の意見書、後見人等候補者事情説明書
・ 成年後見人候補者の戸籍謄本、住民票、身分証明書、登記事項証明書
・ 申立書付票
・ 本人に関する報告書
・ 診断書
・ 後見登記されていないことの証明書
出典:裁判所「成年後見等申立ての手引」(https://www.courts.go.jp/miyazaki/vc-files/miyazaki/2020/kasai_kouken/00-1seinenkoukentoumousitatenotebikiR0304.pdf)
上記の申立書については家庭裁判所で入手できます。
《まとめ》
認知症になってしまって意思能力がない親の不動産を売却するには、成年後見制度を利用する必要があります。しかし、成年後見人制度は複雑で、数多くの手続きが必要なため、諦めてしまう方も少なくありません。
とはいえ、成年後見制度を利用せず、不動産を売却できなかった場合は、不動産の維持費を支払う必要があるなど不利益を被ります。
そのため、この記事では成年後見制度について詳しく解説してきました。
認知症の親の不動産の売却で悩んでいる方は、この記事で紹介したポイントを参考にするようにしてください。